Twitterで企業公式アカウントを運用するにあたり、気をつけなければならないのが"炎上"です。
SNS担当者に抜擢された人が一番気にする部分ではないでしょうか。
私も仕事上でTwitterの企業公式アカウントを運用しているのですが、過去に一度、炎上しかけたことがありました。
炎上しないよう注意していたのに、です。
そのときに受けた言葉の暴力やツラい経験を、この記事に辿り着いた方に味わってほしくありません。
この記事では、Twitterで炎上しないために気をつけること、炎上してしまった際の対処法について、実際に"中の人"としても活動している私なりの見解も交えながらお伝えしていきます。
Twitter企業公式アカウントの担当者になりたてのあなたに、こちらの記事が参考になれば幸いです。
もくじ
どのようなツイートが炎上しているのか
炎上を避けるためには、実際にどのような炎上があったのかを知る必要があります。
ここでは、実際に私自身の体験談と他企業の事例をみていきましょう。
私が実際に体験した炎上エピソード
私は小〜中規模のWebサイトの運営に携わっており、記事コンテンツを毎週掲載していました。
ある日、記事コンテンツの内容に「誤った情報があった」旨がツイートされていることに私は気づきます。
私は当時、Twitter担当になって間もない時期でしたから、正直どうすればいいか分からずテンパってしまいました。
すぐさま謝罪文を作成して上長に確認し、謝罪と該当箇所の修正を行う旨をリプライ。
しかし、そのときは企業と個人の距離感をキチンと測れておらず、「また何かお気付きの点がございましたらご指摘ください!」といったフランクな謝罪文になってしまいました。
これが良くなかった。
このリプライが拡散され、大炎上…とまではいかないものの、「反省しろ!」とのお言葉をいただく結果に。
数日後、この騒動は該当記事の削除によって沈静化しましたが、私は一歩間違えば企業の信頼が大きく損なわれることを、高すぎる授業料を支払って思い知りました。
他の有名企業の例
他企業のTwitter炎上例もみてみましょう。
有名なところだと、タカラトミーさんやアツギさんの炎上騒動があります。
タカラトミーのTwitterアカウントは38万フォロワーを誇りますが、「某小学5年生の女の子の個人情報を暴露しちゃいますね」と「リカちゃん電話」の番号を投稿し、「女児への性犯罪を連想させる」と批判が殺到。会社として謝罪に追い込まれる事態となりました。
また、アカギの公式アカウントでは「タイツの日」のキャンペーンとしてイラストレーターによるタイツ姿の女性たちのイラストを投稿したところ、「女性搾取だ」として批判が殺到することに。
もちろん、"中の人"は純粋に「フォロワーに楽しんでもらいたい」という気持ちしかありません。
しかし、こうした炎上は"中の人"が「フォロワーとの繋がり」だけに意識が向いてしまったがために、世間一般(フォロワーじゃない人々)との温度差が生まれたことが要因として挙げられます。
SNSはフォロワーに限らず、あらゆる考えをもった人が集まっている、ということは忘れてはいけません。
参考:タカラトミーにアツギ、企業SNSの「中の人」はなぜうっかり大炎上したか
炎上しないためにすべきこと(運用方針)
それでは、炎上しないためには何を心がければいいのでしょうか。
まずは、運用開始段階からできる炎上防止策についてご紹介していきます。
ガイドライン・マニュアルの作成・共有
Twitter運用を進めていく前に、ガイドラインやマニュアルの作成を行いましょう。
企業がTwitterで炎上する要因の1つとして、アカウントの私物化が挙げられます。
そのため、"中の人"が入れ替わっても同じような運用ができるように、マニュアル化を進める必要があるのです。
また、資料作成をするにあたっては、実際にTwitter運用する担当者自身で1から作成することをオススメします。
ガイドライン・マニュアルを自分自身で調べながら作成するので、Twitter運用における体系的な知識を得られるチャンスとなります。
自社の広報にマニュアルがあるか確認
そもそも、自社に炎上時の対応マニュアルが置いていないかチェックしてください。
企業にとって、炎上時の対応というのは社会的責任を果たすためにも重要であるため、事前にマニュアルを準備していることが多いです。
これは大規模な企業になればなるほど社会的責任も大きくなるので、マニュアルを用意している可能性が高くなります。
ガイドライン・マニュアル作成と同時に、自社に対応マニュアルがないか広報に確認するといいでしょう。
ダブルチェックの導入
ツイート(特に、企業ブログ等をSNSで発信する場合)は、社内の人間にダブルチェックを依頼できるよう仕組み化していきましょう。
先ほどもお伝えしたように、Twitter担当が1人だけで運用していると、「フォロワーに楽しんでもらいたい!」というフォロワーファーストに歯止めが効かず炎上リスクが上がってしまう恐れがあります。
そのため、炎上を極力避ける場合は1週間前ぐらいからツイート内容を考案し、ダブルチェックしていくぐらい慎重にしてもいいでしょう。
簡単な流れとしては、次のとおりです。
簡単な流れ
- 発信するコンテンツ選定(企業ブログ等)
- ツイートの本文を考える
- 一覧にまとめて、ダブルチェック依頼
Twitter企業公式アカウントは、いわば会社の顔です。
社内の人には「めんどくさいなぁ」といわれるかもしれませんが、ダブルチェックの重要性を認識してもらったうえで、協力をお願いしてみましょう。
ブランディングの方向性を検討
少し高度な話になってしまいますが、日頃のブランディングが炎上を防ぐ場合もあります。
例えば、シャープやタニタ、キングジムといった大きなアカウントを運用されている方でも、炎上を経験しています。
しかし、これらのアカウントは普段からフォロワーとしっかりした関係性を築けているため、フォロワー離れが起きずに鎮火していきます。
このようにフォロワーと信頼関係を構築しつつ、失敗の後に誠実に謝罪したり、フォローしたりすれば大きな問題には繋がりにくいのです。
参考:シャープやタニタやキングジムのTwitter、たまに炎上でもフォロワー減らない理由
また、上記の例とはまた違った意味でブランディングに成功しているアカウントもあります。
例えば、ナゾロジー@科学ニュースメディアさんもその1つ。
こちらのWebメディアは画像とともにかなり攻めた文章を書くことで人気を博しています。
「アニメと現実の区別」生後19カ月から可能と判明https://t.co/jb7MMooHif
CEUは幼児にアニメのボールが画面外の箱に入る動画を見せボールの位置を質問。しかし生後19カ月以降の子供は騙されず現実とアニメの出来事をしっかり区別していました。一部の大人より幼児の認知能力は高いのかもしれません pic.twitter.com/OHSBcElX1C
— ナゾロジー@科学ニュースメディア (@NazologyInfo) December 3, 2021
「一部の大人より幼児の認知能力は高いのかもしれません」と、一見炎上しそうな内容ではありますが、フォロワーからは賞賛の声が多く寄せられました。
こちらのアカウントは普段からユニークな実験結果を発信するメディアとして知られており、ユニークさの延長で該当ツイートもフォロワーに受け入れられている、ということです。
ブランディングは今後のTwitter運用においては必須項目です。
どういった運営方針にしていくのか、社内でキチンと定めていく必要があります。
炎上しないためにすべきこと(日常業務)
ここまで、組織的に炎上を防ぐための方法についてお話してきました。
さらにここからは、実際にツイートする担当者が日頃のツイート等で意識すべき炎上防止策についてまとめていきます。
炎上を防ぐ5S
「炎上をしたくない!」と考えるのであれば、これからお話しする"5S"の話題にはできるだけ関わらないようにしましょう。
"5S"とは、次の5つのトピックの頭文字を取った名称です。
炎上の5Sとは
- 政治
- 宗教
- スポーツ
- セクシャル
- 差別
こちらは企業公式アカウントとして成功をおさめた東急ハンズ担当者さんの書籍『共感で広がる公式ツイッターの世界―東急ハンズ流企業アカウントの育てかた』で出てきたワードです。

と感じるかもしれませんが、野球ひとつとってみても、どの球団を応援するか、監督や選手は誰を起用すべきか、先日の〇〇選手のプレーは良かったか悪かったかなどなど…人によって考え方は変わってくるかと思います。
上記5つのトピックは様々な考え方・価値観が存在するため、企業公式アカウントとして意思表明するのはリスクが大きいです。
基本的には、これらのテーマは避けるのが無難でしょう。
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時と場合に合わせた言葉選び
Twitterは企業と個人の関係がフラットなSNSですが、言葉選びにはいつも以上に慎重になる必要があります。
特に、自社が扱っている商品等に不具合が発生した際の対応は要注意。どんなに瑣末な内容だとしても、です。
例えば、私の実体験の話を繰り返してしまいますが、「また何かお気付きの点がございましたらご指摘ください!」といった言葉選びが原因で、炎上が起きてしまいました。
炎上した要因としては、上記の文章が「また間違った情報を掲載してしまうかもしれないけど、そのときはよろしくね!」といった意味にも捉えられる発言だったため、ユーザーの反感を買ったものと考えています。
SNSはテキストでもやり取りがメインになるので、細かなニュアンスがなかなか伝わりにくいコミュニケーション方法です。
こちらの意図しない文章の捉え方をされないよう、ツイート文を書き終えたら「この文章をみて相手がどのような印象を持つかな」と一呼吸置いて考えることが大切です。
エゴサーチの徹底
炎上を未然に防ぐためには、積極的にエゴサーチすることをオススメします。
炎上は一度燃え広がってしまうとすぐには鎮火しないため、延焼する前に早期発見することが肝心だからです。

という場合は、エゴサーチを自動化してしまいましょう。
例えば、企業でSlackを活用している場合、「IFTTT」と呼ばれるサービスとTwitterを連携することで、自動的に自社に関するツイートを拾いあげてSlack上に表示させることができます。
Twitterを開いて検索する煩わしさがなくなるため、業務効率化という面でも有効です。
また、「Twitterで炎上してるんじゃないか」と1日に何回も自分自身でエゴサーチすることは、精神的にも良くありません。
あなたの心を守る意味でも、自動化できる部分は自動化してくださいね。
もしも炎上してしまったら…
ここまで、炎上しないための対策について述べてきました。
しかし、Twitter担当者がいくら気をつけていても、ユーザーから自社に対するネガティブな声が上がることもあります。
ここからは、万が一の炎上が起きてしまった場合の対処法についても説明していきます。
誠意をもって謝罪
謝罪をする必要がある場合、誠意を示す言葉選び、ツイート文を心がけましょう。
具体的には、お客様と面を向かって謝罪するときや、公の場で謝罪するイメージで文章を考えることです。
繰り返しになりますが、SNS上では企業と個人の立場がフラットにみえても、あくまでも関係は企業と個人です。
普段のツイートではそこまで意識する必要はありません。しかし、何かしらこちら側に非がある場合には、「企業を代表して謝罪しているんだ」というビジネス意識を持つようにしましょう。
謝罪は硬すぎる分にはいいですが、柔らかい印象はNGです。火に油を注ぐだけです。私が証明です。
原因の説明・再発防止策の提示
これは謝罪と同時に行うことですが、なぜそれが起こったのかをきちんと説明しましょう。
ただ「申し訳ございませんでした」と頭を下げても、「わかりました!」と納得してくれる人は少ないです。
そのため、事が起きてしまった経緯と、今後どのような対応を行なって再発防止に努めるのか。
上記2点はしっかり伝える必要があります。
そして、その際にやってはいけないことが「言い訳」をすることです。

このような言い訳は炎上を加速させるだけです。
当然ですが、誠意のない対応が最もユーザーを苛立たせます。
誠意を感じられるか否か、すごく大事なことなので肝に銘じてください。
時間が解決してくれるまで待つ
「誠意ある謝罪」と「原因の説明・再発防止策の提示」。
この2つをしっかり行なった後は、時間が解決してくれるのを待つしかありません。
世の中、どんなに誠実に対応したとしても、揚げ足取りをしたり、いちゃもんをつけたりする人は残念ながら存在します。
「聖人」といわれているヒカキンさんですら、アンチと呼ばれる人たちがいるぐらいです。
これはもう仕方がないことです。
しかし、誠意ある対応を示せば、それを評価してくれる人も現れるはず。
できる限りのことをしたら、炎上しているツイートへ新たに薪をくべる人が出てきたとしても静観しているほうが得策です。
まとめ:叩かれる側になる"恐怖"
今回の記事をまとめると、下記のようになります。
運用開始する前に検討すべきこと
- Twitter担当者がガイドライン・マニュアルを作成する
- 自社の広報にマニュアルがあるか確認してみる
- ダブルチェックできる環境を整える
Twitter担当者が日頃気をつけること
- 人によって意見が異なる話題を避ける
- 時と場合に合わせた言葉選びをする
- 炎上が延焼しないようエゴサーチを行う
炎上してしまった際の対応
- 言い訳せず、誠意をもって謝罪する
- なぜ起きてしまったのか、原因と今後の対策を伝える
- やれるだけのことをやったら、時間が解決してくれるのを待つ
Twitter担当者は、フォロワーと交流できる嬉しさや楽しさがある反面、ネガティブなコメントも矢面に立たなければなりません。
もちろん、Twitter運用するにあたっては「仕事としての意識」を持って取り組むことが大前提ですが。
炎上…なんて起きた日には、メンタルはボロボロです。
私の場合、炎上が落ち着いたあとも書き込まれたネガティブコメントが頭のなかでずっとグルグル残っており、1週間ほど情緒不安定でした。
これからTwitter運用を始める方には、そんなことにはなってほしくありません。
楽しくTwitterと向き合うために、まずはTwitter運用の「ルール化」から取り組んでみてはどうでしょうか。