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『完全教祖マニュアル』から読み解くマルチ商法ビジネスとは?

『完全教祖マニュアル』から読み解くマルチ商法ビジネス

この記事では、『完全教祖マニュアル』という書籍の内容から、マルチ商法に何故ハマってしまうのかについて考察していきたいと思います。

私自身、マルチ商法まがいの集団に勧誘されて一時的に入会してしまったときがありました。

そのときの内部の様子が新興宗教の教祖ビジネスと似通った部分が多かったため、本記事を執筆しようと考えた次第です。

「もしかして自分のいる組織やばいかも…?」と判断できかねている人は、ぜひ最後までお付き合いください!

マルチ商法とは?

マルチ商法とは、正式には連鎖販売取引といいます。

会員が新規会員を誘い、その新規会員が更に別の会員を勧誘することで組織を形成・拡大する販売形態のことです。

マルチ商法は特定商取引法により厳格に規制されてはいます。

しかし、こうした法律の抜け穴をくぐり抜けて悪徳ビジネスを行う集団も少なくないので注意は必要です。

私がマルチまがいの集団に入会してしまったときの体験談も書いていますので、気になる方は読んでみてくださいね。

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完全教祖マニュアルとは?

完全教祖マニュアル』は架神 恭介氏が執筆した教祖になるためのマニュアル本です。

いかに教祖になることが素晴らしいかを既存宗教のエッセンスを交えて説明した斬新なビジネス書(?)になります。

教祖ビジネスを始めるにはどうすればいいかが面白おかしく書いてあり、楽しく読むことができる一冊でした。

マルチ商法と教祖ビジネスは共通点が多い

『完全教祖マニュアル』から読み解くマルチ商法ビジネスとは?

さて、マルチ商法と教祖ビジネスには、実は色々共通点があります。

どのような共通点があるのか。ひとつずつ確認していきたいと思います。

教祖という存在

本書によれば、教祖は人をハッピーにすることが仕事だとされています。

自分の教えが信者の不平不満を掬い取って信者をハッピーにする。

そして、信者をハッピーにした対価としてお金を受け取る。これが教祖ビジネスです。

マルチ商法にも、教祖的な立ち位置の人がいます。

それはセミナー主催者のお金持ち(と言われている人)や、その師匠にあたる人です。

セミナー主催者やその師匠が権威を振りかざし「私はこういうやり方で金持ちになった!」と主張します。

そして、「お金持ちの言うことを実践すれば、自分もお金持ちになれるんだ!」と思った人がそのコミュニティにお金を払って入会します。

そこでは切磋琢磨していく仲間とともにお金持ちの教えを実践します。

このように目標に向かって頑張っているという実感が、人をハッピーにさせるのです。

社会的弱者がターゲット

教祖ビジネスもマルチ商法ビジネスも、ターゲットになるのは社会的弱者です。

社会的弱者とは、私たちの社会において、不利益な立場を強いられている人のことを指します。

このような社会的弱者に対して、社会とは別の価値基準を提供することで、その人をハッピーにさせるという点で共通しています。

社会は常に正しいわけではありません。

そして、社会の提示する価値基準では「負け組」となってしまう人が必ず存在します。

そこであなたがすべきこととは、社会に反する新しい価値基準を提唱し、「負け組」の人を「勝ち組」へと変えてハッピーにすることなのです。

新興宗教やマルチ商法ビジネスは時代のニーズに向き合えるという利点があります。

これは、古い宗教などにはないアドバンテージです。

社会的弱者のニーズを見極め、それを満たす方法を与えることでハッピーにさせるのです。

例えば、毎日残業をしていてワークライフバランスが崩壊している人には、「1日数時間で月収100万円ですよ〜」と甘い言葉をかけます。

社会的弱者は精神的にも追い込まれている場合が多いですから、こうした口車に乗せられてしまいます。

こうして、勢力は拡大していくのです。

相手に「困っている」と思わせる

宗教でもマルチ商法でも、人は困っていなければそれらには頼リません。

ならば、どうするか?

簡単です。人を困らせてしまえばいいのです

本書では、キリスト教を例にして次のように説明しています。

キリスト教の言うところによれば、毎日のほほんと暮らしている私たちも実は困っているのです。

というのも、私たちは、遠い遠いご先祖様のアダムさんとイヴさんがエデンの園で果物のつまみ食いをした罪を引き継いでおり、このままのほほんと生きて死んだ場合は一〇〇%地獄に落ちてしまうのです。

天国に行きたければキリスト教徒となって神を信じるしかありません。

それで、もし彼らの言い分を信じるならば、私たちはこのままだと将来地獄に落ちて確実に困るわけですから、「そうか、今まで全然気付かなかったけど、オレって実は困ってたのか」と不安になってしまうわけです。

マルチ商法だと、こうしたある種の煽りがより現実的になってきます。

例えば、自分が理想的な生活を送るために必要な金額を考えさせた後に日本の平均生涯収入を伝えて、「いまの年収では理想の暮らしはできないよね?」といって困っていることを自覚させるやり方があります。

現状で幸せだと感じている人でも、不安を煽られることによって入会してしまうといった手法もあるということです。

人に行動させる「きっかけ」をつくる

宗教もマルチビジネスも、人に行動させる「きっかけ」を与える役割があります。

多くの人は死後の世界で幸せかどうかよりも、現世利益(いま幸せかどうか)を求めています。

必要なのは理屈ではなく、ハッピーになったという実感です。

そのためには、その人が良いと思っていることを実行させてあげれば、勝手にハッピーになります。

人は良い行いも悪い行いも理由がないとすることができません。

「困っている人がいたら助けましょう」という"教え"を与えることが、その人が行動する"理由"となります。

先の例は「困った人がいたら助けましょう」でしたが、同様に「真面目に働きましょう」「人の悪口は言わないようにしましょう」「小さなことで怒らないようにしましょう」「暴飲暴食を控えて体を大切にしましょう」「目標に向かって努力しましょう」といったことを掲げても構いません。

真面目に働けば給料も上がりますし、悪口を言わず小さなことで腹を立てなければ、人付き合いが円滑になり家庭円満にもなるでしょう。暴飲暴食を控えれば健康に良いですし、ちゃんと受験勉強すれば大学も受かります。

(中略)子供でも分かるようなことが実際に実行できないのだから、宗教という「理由」が必要なのです。

本来、人は大きなポテンシャルを秘めています。

そして、それを引き出す「きっかけ」として、宗教やマルチ商法といった環境を提供しているのです。

組織から抜けられないメカニズム

『完全教祖マニュアル』から読み解くマルチ商法ビジネスとは?

宗教もマルチ商法ビジネスも、なかなか抜けることは容易ではありません。

なぜ抜けることができないのか。その理由を考察します。

救済と呪いは表裏一体

救済と呪いは表裏一体です。何故なら、救済がなくなってしまえば、たちまち人は不幸になる(と考えてしまう)からです。

例えば、「いま自分が楽しく暮らせているのは教えをしっかり実践しているからだ」とか「私のコミュニケーション力が上がったのはこの集団に属しているからだ」と考えていると、そこから抜け出すことが怖くなってしまいます。

何故なら、いまの状態はこの集団に属しているから得られていると考えてしまうためです。

信仰を無くせば救済はなくなり、不幸になるという、集団への継続的なコミットメントを要求されているのです。

組織の内外で温度差をつける

組織の内外で温度差をつけることも、逃れられなくする有効な手段です。

一般社会と異なる習慣を与えることで、信者に特別な組織に所属しているという実感を持たせます。

既存の宗教でいうと食物規制なんかが良い例です。

マルチ商法ではどうか?

例えばですが、私が所属していた集団では、イベントは全参加することが求められていました。

当時は新型コロナウイルスの影響で飲み会などは自粛ムードでしたが、その集団ではガンガン飲み会が開催されていました

世間とはまるで逆ですよね?

こうした点でも、世間との温度差は生み出されます。

人というのは、慣れ親しんだものは簡単には捨てられないものです。

それが例え、世間的に見れば異常な習慣だったとしても、それが日常化すれば抜け出せなくなってしまいます。

まとめ

この記事をまとめると次のようになります。

  • 教祖ビジネスとマルチ商法ビジネスは似通った部分が多い。
  • 現状困っている人、困っていそうな人がターゲットになりやすい。
  • 所属していることが当たり前になると、抜け出すことは困難。

最後に、『完全教祖マニュアル』は教祖ビジネスをわかりやすく解説されている良書です!

教祖ビジネスを始めたい!…という方は稀でしょうが、こういったビジネス手法を知っておくと、気づいたら信者になっていたなんてことにはならないと思います。

気になる方は読んでみてはいかがでしょうか。

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